【芸能】異性交遊による「人気アイドル」の謝罪あいつぐ、理想や覚悟を押し付ける「ファン」のあり方にも問題か

【芸能】異性交遊による「人気アイドル」の謝罪あいつぐ、理想や覚悟を押し付ける「ファン」のあり方にも問題か

最近、人気アイドルたちの謝罪が相次いでいますが、これは異性交遊に対するファンの反応が影響しているのかもしれません。

異性と親密そうにしている写真が流出した人気アイドルの謝罪が相次いでいる。

乃木坂46」の岩本蓮加さんは1月14日、自身のブログで、「ファンの皆様の応援と支えがあり、12歳から8年間乃木坂46として活動ができているのにも関わらず、裏切るようなことになってしまったことを深く後悔しています」と謝罪し、一定期間の活動自粛を発表した。

また、「モーニング娘。’25」の北川莉央さんも活動自粛はしていないものの、 自身のブログで騒動を陳謝した。

ファンにとって、疑似恋愛の対象という側面があるアイドル。異性と親しくしている写真がネット上で流出することで炎上し、ときにSNSでは誹謗中傷も散見され、休業を余儀なくされるケースは少なくない。

恋愛や異性関係において常にリスクがついてまわるが、誰もが情報発信できるSNS時代だからこそ、彼・彼女たちの姿勢だけでなく、応援するファンのあり方が問われる。

芸能問題にくわしい河西邦剛弁護士に聞いた。

●一部ファンによる「理想」の押し付け

誹謗中傷コメントには「辞めろ」「自覚が足らない」というものが多いですが、表現によっては、侮辱罪名誉毀損罪となる可能性もあります。

そもそも、アイドル本人も目にするSNSで、誹謗中傷する行為はとても恥ずかしいことです。不満があるのであれば、誹謗中傷するのではなく、何も言わずにファンを辞めればいいということに尽きるでしょう。

弁護士としての経験から、アイドルに誹謗中傷コメントをする背景には「低い自己肯定感」があるような実感があります。このような人の中には、ファンサービスを過度に求めるなど、不足した自己肯定感をアイドルで満たそうとします。

一方で、アイドル側も競争が激しくなっており、歌とダンスというパフォーマンスだけでなく、ファンの自己肯定感を満たすことも求められるようになっています。

その結果、行き過ぎたファンは、アイドルにひたすら理想を求めるようになり、「好き」や「応援」という気持ちが、いつの間にか「メンバーはこうあるべきだ」という押し付けに変化します。

このタイプには内心、メンバーに対して恋愛感情を求めるファンがいるのも事実です。恋愛感情の延長として、メンバーが異性と交遊関係を持つことを極端に否定し、異性交遊が発覚すると誹謗中傷に転換する傾向があります。

極論を言えば、行き過ぎたファンは「アイドル活動以外」は受け入れることができず、「理想の押し付け」を「メンバーとしての覚悟や自覚が足らない」という言葉にすり替える傾向にあります。

たとえば、大学に進学してアイドル活動以外の交友関係を広げながらも、歌やダンスといったスキルアップについても、誰よりも手を抜かないというメンバーもいるはずです。

●契約書にあっても恋愛禁止は法律上無効

法律的には、恋愛禁止条項が芸能事務所とメンバーとの専属マネジメント契約書に明記されていても、昨今の裁判例では、その有効性が否定される傾向にあります。

つまり、契約関係にある芸能事務所ですら、メンバーの人間関係を含め、プライベートへの介入は難しいということです。

なおさらファンがプライベートを規制するのは難しいのですが、SNSへの誹謗中傷という手段で自己の意思を押し通そうとする人もいるのが現実です。

アイドルに偶像性を求めるのは、今のSNS時代には難しくなっています。それは、昔よりアイドルの意識が低くなったということではなく、SNSの普及により環境が変わったということです。

街中でも、学校でも、誰もがカメラ付きスマホを持っているので、いつどこで意にそぐわない写真を撮られてSNSにアップされるかわかりません。

投稿についての法律的問題もありますが、現実的に、常にプライベートが晒される状態にあるなか、アイドル側も学校などで「私はアイドルだから」というスタンスで異性との交友を拒めば、学内での人間関係もうまくいかなくなるでしょう。

●アイドルの「覚悟」「自覚」をどう考えるのか?

結論を言えば、メンバー側が、加入するときに決めた契約内容やメンバー間のルールに従っているのであれば、それを超えた「覚悟」や「自覚」については、メンバー自身がそれぞれ選択していくことだと思います。

契約や自分たちで決めたルールは守るべきである一方、覚悟や自覚には明確な基準がなく、メンバーによって異なります。

メンバーの中で一番高い覚悟や自覚を持ったメンバーに全員の基準を合わせるという方針もあるかもしれません。実際ファンからしても覚悟のあるメンバーは魅力的に映るでしょうし、芸能事務所側にとっても、ファン獲得になるので望ましい状態かもしれません。

しかし、宝塚歌劇団の自死事件に関する調査報告書にも「芸事は極めようとすると際限がない」と明記されているように、メンバー側にアイドルとしての自覚を求めれば、際限なくプライベートに介入できてしまいます。

特に10代20代というのは成長が著しい時期で、価値観もどんどん変化します。

加入後の成長とともにアイドル活動以外のことについても興味を持つことは人として自然であり、それを「覚悟」や「自覚」といった言葉で潰してしまえば、活動を継続できなくなりますし、成り手も減ります。

●「自覚」の基準をメンバーに委ねるのも一つのあり方

アイドルとして5年10年単位での活動継続と、人としての成長環境の両立は重要な課題です。アイドル側が契約やルールを守ったうえであれば、「どの程度プライベートを制限するか」はメンバー個人の判断に委ねてよいのではないかと思います。

もちろん、恋愛感情を求めてくるファンは望まない交友関係が発覚することで離れていく可能性もありますが、それはメンバー自身が一番理解していると思います。そのうえでの各メンバーの選択と行動については、周りも受け入れる優しさが必要なのではないかと思います。

法律やルールと覚悟や自覚は異なります。覚悟や自覚というのは、自分自身に対してのみ課していいものであり、他人に求めたり、ましては強制したりはできないものです。

一方的な理想の押し付けから「裏切られた」と感じ、匿名で誹謗中傷することは犯罪に該当する可能性があるだけでなく、とても恥ずかしいことです。匿名で投稿しても発信者情報開示請求により特定されることもあります。推し活最後の思い出が、誹謗中傷についての開示請求を受けることになれば、それこそ最悪の思い出として残るでしょう。

グループにメンバーがいて、それぞれ覚悟や自覚は異なる。それでも、全員がファンにとっては替えのきかない存在であり、現実にグループとしても成り立っているのであれば、それはアイドルグループとしての一つのあり方だと思います。

【取材協力弁護士】
河西 邦剛(かさい・くにたか)弁護士
「レイ法律事務所」、芸能・エンターテイメント分野の統括パートナー。多数の芸能トラブル案件を扱うとともに著作権、商標権等の知的財産分野に詳しい。日本エンターテイナーライツ協会(ERA)共同代表理事。「清く楽しく美しい推し活〜推しから愛される術(東京法令出版)」著者。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:https://rei-law.com/

異性交遊による「人気アイドル」の謝罪あいつぐ、理想や覚悟を押し付ける「ファン」のあり方にも問題か

(出典 news.nicovideo.jp)

続きを読む

続きを見る