【社会】《“フジテレビ葬”と揶揄も》安倍元首相の国葬の司会はフジアナウンサーだった…元社員が語っていた提言と日枝氏と政治権力の近さ
【社会】《“フジテレビ葬”と揶揄も》安倍元首相の国葬の司会はフジアナウンサーだった…元社員が語っていた提言と日枝氏と政治権力の近さ
多くの人は忘れたかもしれないが実はとても重要だったフジテレビのあの件。今回のテーマである。
フジテレビは中居正広氏の女性トラブルの一連の対応を問われた。トラブルは「人権侵害が行われた可能性のある事案」と港浩一前社長が会見で述べたほど深刻なものだ。現在は第三者委員会が調査をしており、調査報告書は3月末をめどに提出される予定である。
元社員の大島新氏が語ったフジテレビ問題
そうした中で今もさまざまな角度からフジテレビについて語られている。私がハッとしたのは次の動画だ。
【大島新、フジテレビへの提言】日枝体制への疑問は前からあった(文藝春秋PLUS)
元フジテレビ社員で現在はドキュメンタリー監督の大島新氏が語っている。大島監督の言葉を紹介する前に整理しておくと、フジテレビ問題は「日枝久問題」にも注目が集まっている。日枝氏は36年間もトップに君臨しており、その絶対的な権力の構図が問われているのだ。これは中居問題にも通じているように見える。
トラブルにつながる流れにはフジテレビ社員のA氏の関与が指摘されており、A氏の上には港浩一氏(前社長)がいて、港氏が出世した背景にもフジテレビの接待文化があったのではないかという指摘があるからだ。港氏の上には絶対的な日枝久氏がいる。つまりフジテレビ問題とは絶望的な権力勾配についても問われているのである。
この構図を頭に入れて動画での大島監督の言葉を紹介しよう。監督は日枝体制の象徴として、
「1点指摘したかったのが、そんなに大きく報じられたり疑問視されていませんでしたが、安倍晋三元総理の国葬がありましたよね。国葬の会場の中の司会ってフジテレビのアナウンサーがやっているんですよ」
と語り始めた。MCを務めた文藝春秋PLUS編集長は「ああ、そうだったんですか」という反応だったから、フジのアナウンサーが国葬の司会を務めたことは今となってはこれぐらいの認識なのかもしれない。
「まさにフジテレビだなと思った」
ただ、大島監督はこの件を「まさにフジテレビだなと思った」という。あれだけ世論が割れた安倍氏の国葬に対して何の疑問もなくアナウンサーが司会をやっていることに驚いたと。当時フジ内部の人に聞いてみたらアナウンス室でも反発があったという。中立とか報道の客観性が保てるのかと。
「だけどやっぱり押し切られたんだということを聞いたんですよね。細かい話かもしれないがそれっておかしくね? と内部でちゃんと上がっていかないと、たぶんおかしくないと思っている人が多いんだと思う」
さらに大島監督は語る。
「日枝さんは安倍晋三さんとゴルフに行っていると散々報じられているわけです。はっきり言ってメディア機関のトップとしてはありえない行動なわけですよね。時の総理大臣とゴルフしてニコニコしているのがどういう風に見られるかがまったくわかっていないわけですよね。そういう会社でアナウンサーが国葬の司会をやっていると。こういうことがどう見られているか疑問を持ってほしい」
「フジテレビ葬」の部分について「カットできないか?」と…
私はこの部分を聞いて“そういえば”と思い出した。国葬の司会をフジテレビアナウンサーがやっていたことを忘れていたわけではない。大島監督の話につながるエピソードを思い出したのだ。ここからは自分の話になるが、昨年暮れにフジサンケイグループの扶桑社から『半信半疑のリテラシー』という新刊を出した。ここ数年の政治・社会・スポーツ・芸能に関するメディア論の本だ。
その中で安倍元首相の国葬の読み比べコラムを収録したところ、編集者から相談があった。国葬を東スポが「フジテレビ葬」と報じたと書いた部分について扶桑社の上から「カットできないか?」と言われたという。
当該コラムは「Numberweb」(2022年10月2日)に掲載したもので、
「面白かったのは『安倍元首相国葬は「フジテレビ葬」』という東スポ社会面の記事。国葬は、司会進行をフジテレビの現役社員である島田彩夏アナウンサーが務めたことで《政府主催イベントで、報道機関としての公平中立性から異論も出た》。起用は葬儀事務局側が過去の安倍氏との関係性などを考慮し、島田アナに指名があったという。フジは国葬を完全中継。《“フジテレビ葬”とも揶揄されるほどだった。》」
と私は書いていた。
日枝氏と政治権力(安倍氏)の近さ
新刊では産経新聞について書いたコラムにも物言いがついたのだが、編集者が朝日新聞だけでなく産経新聞の批評も載せるべきだと頑張って通してくれた。上からはそれなら東スポの「フジテレビ葬」部分はカットしてほしいとのことだった。もしかしたら当時から気にしていたのだろうか。この経緯については編集者からどこかで書いてもらって構わないと言われていたのだが、今回思い出した。
先述したように大島監督はフジテレビの国葬問題をズバリ指摘したが、私も上記のようなエピソードを思い出してハッとしたのだ。つまり日枝氏と政治権力(安倍氏)の近さである。フジサンケイグループにとっては今でも急所の一つなのだろう。そこを言われると報道を持つメディアとしてそもそもどうなの? という大きなテーマにもなるからだ。
産経にはかつて合同結婚式の広告が載ったことも
3年前に文春は『日テレ高視聴率でもフジが統一教会を報じない理由』(8月18・25日号)として、
「現在もフジサンケイグループの代表を務める日枝久氏は、安倍晋三元首相と会食やゴルフを重ねるなど親しい間柄。また、産経にはかつて合同結婚式の広告が載ったこともありました」
というフジ局員の証言を載せていた。フジテレビ問題とは日枝問題でもあるのだ。
ちなみに東スポが「フジテレビ葬」と書いた記事は、当時のSNSの反応をまとめたものだった。
《ネット上では島田アナの起用とともに見事なまでの安倍氏のお見送りに国葬ではなく、“フジテレビ葬”とも揶揄されるほどだった。》
つまりSNSでは国葬の司会をフジテレビアナがやるという関係性やおかしさについてバレバレだったのである。いかがだろうか。こうなった今、フジテレビは国葬や日枝問題についても検証をしたらどうだろう。変わるきっかけになるかもしれない。若手・中堅や現場の人たちには期待したいのだ。
(プチ鹿島)
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