【社会】サンダルで車運転 道交法違反に!? ドライバーの服装巡り、波紋広がった事例も 弁護士に聞く
【社会】サンダルで車運転 道交法違反に!? ドライバーの服装巡り、波紋広がった事例も 弁護士に聞く
4月15日まで「春の全国交通安全運動」が実施されています。この運動は、国民に交通ルールの順守と正しい交通マナーの実践を呼び掛け、交通事故防止の徹底を図ることを目的に、毎年行われます。ところで、もしサンダルやハイヒールなどを履いて車を運転した場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
道交法では服装に関する規定はないが…
Q.そもそも、道路交通法では、車の運転時に着用してはいけない服、履物について、定められているのでしょうか。
牧野さん「道路交通法では車の運転時に着用してはいけない服や履物に関する明確な規定はありません。道路交通法71条6号では、『道路または交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項』を『運転者の順守事項』として掲げており、各都道府県の公安委員会が『運転者の順守事項』を定めるよう、国が各都道府県の公安委員会に委任しています。
それを受けて各都道府県では、車の運転時に着用してはいけない服装や履物などに関して条例で規定しています」
Q.都道府県によって異なるとは思いますが、もしサンダルやハイヒールなどを履いて車を運転した場合、ドライバーが法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。
牧野さん「個々の事例によって異なるでしょう。例えば、東京都道路交通規則では『木製サンダル、げたなど運転操作に支障を及ぼす恐れのある履物を履いて車両など(軽車両を除く)を運転しないこと』と定めており、木製サンダルやげたでの運転を禁止しています(同規則8条2号)。
大阪府道路交通規則でも、『げたまたは運転を誤る恐れのあるスリッパなどを履いて、車両(軽車両を除く)を運転しないこと』と定め、げたや運転を誤る恐れのあるスリッパでの運転を禁止しています(同規則13条3号)。
このほか、北海道の道路交通法施行細則12条では、『げた、スリッパなど運転操作に支障を及ぼす恐れのある履物を履いて、自動車または原動機付自転車を運転しないこと』、福岡県道路交通法施行細則14条では、『げた、スリッパその他運転操作を妨げる恐れのある履物を履いて、車両(軽車両を除く)を運転しないこと』とそれぞれ定めています。
これらの都道府県では、運転中の履物の規則に違反した場合の罰則は特に規定されていないようです。
一方、道路交通法70条(安全運転の義務)では、『車両などの運転者は、当該車両などのハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通および当該車両などの状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない』と定められています。つまり、『車両の装置を確実に操作する』ことを妨げる服装や履物を着用することが禁止されていると解することができます。
そのため、サンダルやハイヒール、げた、着物などを着用しながら車を運転したときに、『車両の装置を確実に操作する』ことを妨げると判断される場合、同法の安全運転の義務違反に該当する可能性があると考えられます。この場合、違反点数が2点加算され、普通自動車だと9000円の反則金が科せられる可能性があります」
Q.もし運転に適切ではない服や履物を着用した状態で車を運転し、事故を起こしてしまったとします。通常の事故よりも責任が重くなる可能性はあるのでしょうか。
牧野さん「車の運転に適切でない服装や履物を着用していたことが直接の原因で事故が発生した場合には、民事の損害賠償責任を負ったり、過失運転致死傷罪に問われたりするなど、責任が重く判断される可能性があります」
Q.運転中の服装を巡り、問題となった事例について教えてください。
牧野さん「福井県の県道で2018年9月、男性僧侶が僧衣を着て軽自動車を運転中、警察官に停止を求められた上で、『運転に支障がある衣服』だとして反則金6000円の交通反則切符(青切符)を渡された事例がありました。
当時のメディアの報道によると、男性僧侶は白衣(はくえ)という裾が足元まである服に、布袍(ふほう)と呼ばれる僧衣を羽織って運転していたということですが、『垂れ下がった布袍の袖がシフトレバーに引っかかる』『白衣の裾が狭く足が動かしにくいため、ブレーキ操作が遅れる』と判断されたようです。
当時の福井県の道路交通法施行細則16条では『げた、スリッパその他運転操作に支障を及ぼす恐れのある履物または衣服を着用して車両(足踏自転車を除く)を運転しないこと』と定められていました(現在、「または衣服」の部分は削除されている)。
メディアの取材に対し、県警交通指導課は『袖をたくし上げたり、足が動かしやすいように着たりすれば安全に支障はない』と回答したとのことですが、僧侶が属する宗派が反発するなど、波紋が広がりました」
オトナンサー編集部
