【芸能】アイナ・ジ・エンド、30歳で迎えた心境の変化「人とは想いがすれ違うのが当たり前」

【芸能】アイナ・ジ・エンド、30歳で迎えた心境の変化「人とは想いがすれ違うのが当たり前」

アイナ・ジ・エンドさんの30歳を迎えた心境の変化についてのインタビューが興味深かったです。

映画『キリエのうた』で俳優デビューするなど、多彩な活動で支持を集めているアイナ・ジ・エンド

3枚目のソロアルバム『RUBY POP』を引っ提げた全国ツアー「ハリネズミスマイル」の真っ最中にデジタルシングル『花無双』をリリースした。表題曲「花無双」は『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』の主題歌。カップリング曲「渇望」は同映画のエンディングテーマだ。30代を迎え、新たな魅力を放つアイナ・ジ・エンドに迫った。

◆「愛がなくなること」をテーマにした歌詞

――『劇場版モノノ怪 唐傘』に続き、第二章の主題歌も務めています。主題歌「花無双」はアイナさんが作詞作曲、河野圭さんがアレンジを手がけていますが、どんなイメージがあったんでしょう?

今回は、TKさんに作っていただいた第一章の主題歌「Love Sick」の激しい方向性とはまた違うバラード曲が良いというリクエストをいただき、バラードだったら自分の思いの丈をしっかり込められる気がしたので自分で作ろうと思いました。

デモの段階で「歪なストリングスを入れたい」っていうイメージが湧いてきて、河野さんにそういうお願いをしたんです。河野さんは王道なJ-POPのストリングスアレンジも上手で何でもできる方ですが、今回は歪なストリングスのモードでお願いしました。

――『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』のどんなところに魅力を感じましたか?

第一章と比べて念が強くて、人の内面をえぐり取っているような描写が多いと感じたので、それに負けないような曲を作りたいなと。

――「花無双」は生きることと死ぬことと愛という大きなテーマが描かれていますが、『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』に背中を押されたところがあったんでしょうか?

そうですね。「人がいなくなること」について追究したシーンがあり、「自分にとって愛がなくなるってなんだろう?」をテーマに歌詞を考えました。

死生観を感じてもらってもいいですし、遠距離恋愛でも、ペットとの別れでも、いろいろな愛に当てはまる歌詞っていうことを一番意識しましたね。

――確かにいろいろな愛に当てはまる曲になっていますよね。1番の「生きてるだけで 愛を知るの」という歌詞が2番では「死ぬまでずっと 愛を知るの」という歌詞に変化しています。この変化にはどんな想いがありますか?

生きていると愛を知ることになると思うんです。けれど、愛を失うと悲しいわけで、だったら愛なんて知らないまま死ねばよかったっていう想いを込めました。でも、結局は「死ぬまで愛するしかない」という定めについて2番では歌っています。

◆1ミリでも愛を交わせたら最高なんだ

――そうやって愛について考える中で気付いたことはありましたか?

人それぞれ愛の懐の深さは違うので、どんな人とも1ミリは愛を交わせるなって思うようになりました。

以前は、相手の愛が浅いと感じてしまうと「もっと想いやれるじゃん」って思ったりしてたんですが、相手からしたら違うことで私に対して「もっと」って思ってるかもしれない。人とはそうやって想いがすれ違うのが当たり前だし、1ミリでも交われるならそれは立派な愛なんだろうなって思う。だから、どんな人に対してもネガティブな感情を持たなくなりました。

大人になるにつれて自分がすごく汚くてみんなが輝いて見えることが増えてきて、周りの人に対して「あんなことしてくれてたのに自分は気付いてなかった」「自分って未熟だな」って思うと同時に、感謝の気持ちを抱き始めました。

親に感謝する時期が来るのと近いと思うんですけど、周りの人に対してそういう感謝の気持ちが生まれてからは、「どんな人とでも1ミリ愛を交わせたら最高なんだ」って思うようになって多くを求めなくなりましたね。

――見返りを求めなくなったんですね。

はい。友達にもよく「変わったね」って言われます。ソロのファーストアルバム『THE END』の曲は「どうして私は右利きで左手は使えないんだ」とか「粧し込んだ日にかぎって 君には会えなかった」とかすごく小さな視点のことばかり歌っているんですけど、昨年リリースしたサードアルバムの『RUBY POP』はそういう描写があまりなくて、少しずつ大きなことを歌えるようになってきてて。それが大人になってきてるってことなのかもしれないです。

――経験や年齢を重ねることで視野が変わってきた。

そうですね。『THE END』の頃は自分のことを歌うことで精いっぱいだったので、当時のレコード会社のスタッフの方も「誰かを救ってあげるとか無理に歌わなくていい。完全に私小説のアルバムにした方がいいと思う」って背中を押してくれてたんですよね。私小説は出し切れた感覚があるので、自然と人のために歌いたいって思うようになりました。

◆宝物のような期間だった激動の20代

――昨年12月に30歳になりましたが、心境の変化は感じていますか?

私は歌を歌ったりステージに立つことが仕事ですが、多分それしかできないと思うんですよね。

でも会社員や専業主婦をやっている友達には立派な30歳が多くて、私みたいに混乱するとたまに一人称が名前になったりせず、いつもちゃんと「私」って言うし(笑)。

もっと大人にならないといけないなって思うけれど、大人になろうとすると、歌詞が生まれてこなくなっちゃったり、振り付けが硬くなっちゃったりするのが難しいなって。「30だからもっとこうしないと」って思い過ぎるとアイナ・ジ・エンドとしては死んでしまう。たくさんのことを吸収できる感性を持った柔らかい心でいたいなと思ってます。

私の周りのチームの人たち、友達、家族はみんな私のことを年齢問わず自由にさせてくれるので、良い環境で伸び伸びやらせてもらえてますね。感謝を忘れずにいたいです。

――自身の20代を一言で表すとしたら?

「激動」ですね。激動過ぎたかもしれない(笑)。BiSHの活動だけじゃなくて、ソロでいろいろなコラボをさせてもらったり、ミュージカルジャニス』や映画『キリエのうた』もあって、26~27歳あたりの2年間くらいは毎日熱があるし3時間ぐらいしか寝てなくて、事務所の社長の渡辺淳之介さんに泣き叫びながら「美容院に行く時間もない!」って訴えるくらいの状況で(笑)。そういう経験をしている人はなかなかいないので、宝物のような期間だったなって思います。

◆もし完璧主義だったら潰れてた

――裏では泣き叫ぶような状況だったということですが、表に出てきているアイナさんの姿というと、全部の表現に全力で取り組んでやるべきことを全うしていたと思うんです。それができたのはどうしてだったと思いますか?

私は一部のこと以外は甘えてるんですよね。例えばBiSHの活動だったら、とにかく振付とライブは頑張るけど、メンバー同士の意見がぶつかることがあっても知らん顔をしてしまったり、トークは任せてしまったり。『キリエのうた』では私は曲を作って演技をするだけ。全部のことに対して「これは超頑張る」っていうことを決めて、それ以外のことは任せちゃう。これまでの人生も無意識にそうやってきてるんですよね。

私がもし完璧主義だったら、自分でスケジュールを管理したり、もっと健康に気を付けたりして、やらなきゃいけないことが多くて潰れてたんじゃないかと思います。楽観的な性格で良かったなって。

――やり切るためにはそうやってバランスを取る必要があったんだと思うので、そのやり方はひとつの正解だと思います。

そうですね。そういうやり方を理解してくれた周りの人たちのおかげでもありますよね。私に対してもっと「ああしなさい、こうしなさい」って言えたと思うんですけど、みんな大事なことは教えてくれながらも程よく放置してくれたので愛を感じます。

◆丁寧な歌のために丁寧な暮らしをしたい

――どんな30代を送りたいと思っていますか?

20代前半はすごく寂しがり屋でずっと誰かと繋がっていたくて、途切れなくLINEをしていたり、家にしょっちゅう親友がいて、親友が来ない時は私が行ったり、みたいな日々だったんですよね。その時期はどんなに強い歌でも寂しそうなんですよ。強がってる時期の歌は人を突き放すような歌い方をしているし、全部歌に出るんだなって。30代は丁寧な歌を歌いたいと思っているのでなるべく丁寧な暮らしをしたいと思ってます。

――アイナさんが思う丁寧な暮らしというと?

今は家を出る15分前とかに起きることが多いんですけど、2時間前には起きてたいですね(笑)。ただ、たっぷり寝てるわけではないんですよ。BiSHの頃はどんなに長くても6時間で目が覚めちゃって、解散してからは時間ができたから8時間寝られるようになって。でも、今でも6時間で起きちゃうことが多いですね。

――周りの人で「こういう丁寧な暮らしをしてみたいな」って思う人はいますか?

めっちゃいます! アオイヤマダはどれだけ忙しくてもぬか漬けやゆず胡椒を作ってるし、いつ家に行っても良い気が流れてる。私より随分年下でたまに赤ちゃんみたいになるんですけど、そういうモードになっても次の日には戻ってるんです。丁寧な暮らしをしてるから、落ち込んでも回復が早いんだと思うんですよね。

(池田)エライザもどんなに忙しくてもちゃんと睡眠時間を確保しているイメージがあるので尊敬してます。決めた時間にきっちりセリフを覚えて、寝る時間が来たらちゃんと寝てるんじゃないかなって。ダラダラしてなさそうで憧れますね。

――アイナさんはダラダラしちゃうんですね。

そうなんです。遅い時間でも映画を見たくなったら見ちゃうし。30代はぬか漬けを漬けてみたいです(笑)。

◆ツアーが大変っていう認識がなかった8年間

──「花無双」の歌詞にも「そろそろ人の営みをしなきゃ」という歌詞がありますが、ここには今話してくれたような私生活への想いが出ているんでしょうか?

出てますね(笑)。今も枯れて腐った花がずっと部屋に飾ってあるし。

――(笑)今は「ハリネズミスマイル」ツアー中でお忙しいと思うので(取材は2月下旬)。

そう、例えばスカパラさん(東京スカパラダイスオーケストラ)やTKさんも「ツアー中で大変ですよね」って言ってくれるんですけど、BiSHをやっていた8年間はずっとツアーだったんですよ。ツアー中なのが当たり前だったので大変っていう認識がなくて。ホールツアーとライブハウスツアーを同時期にやっていたり、1日2公演のこともあって。チェキ会とかもあったし。

――家にいないのが当たり前だったんですね。

そうなんです。最近やっとツアーの大変さがわかりました。ちゃんと体調管理しなきゃいけないし、心も休まらないので、これが本来のツアー中の気持ちなんだなって。だから、ツアーをもっと丁寧に回ろうって思ってます。

今回のツアーはダンサーとして出てる妹と本番前々日にスタジオを借りて踊って、前日には1曲目から最後まで通しで歌ったり、コソコソ練習して本番を迎えるようにしてますね。なるべく寝るようにしたり。これを続けていけば人間の営みができるようになると思います(笑)。

ーー(笑)公演を重ねるごとに振りを改良しているそうですね。

はい。私は自分に対してめちゃくちゃ負けず嫌いなので「前回のライブに負けたくない」って思って、寝る前に振りのアイディアがたくさん浮かんできちゃうんです。「前回は5回転周れたから次は7回転周ろう」とか「7回転周るにはここで顔を切ろう」とか考えてまた眠れなくなっちゃう。

◆今、渇望しているものは「犬の親友」

――肉体的には大変かもしれないですが、それによってパフォーマンスはどんどん良くなっていくわけですか?

そうですね。もっと音を聞けるようになったし、歌のアレンジもたまにしくじるけど挑戦する勇気が出てきました。BiSHは渡辺さんとサウンドプロデューサーの松隈ケンタさんが歌のアレンジをするのがあまり好きじゃなかったこともあって、やってこなかったんです。

でも、レディオヘッドビョークのライブを観ると原曲と全然違うフェイクをやっているし、シガーロスのヨンシーも全然違う歌を歌ってて、そういうのめっちゃ好きなんですよね。「宝者」や「サボテンガール」や「アイコトバ」みたいによくライブで歌っている曲はちゃんと歌うって決めてるんですけど、それ以外の遊べるような曲は最近アレンジに挑戦してます。

――最後に、「花無双」のカップリングの『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』エンディングテーマ「渇望」のタイトルにかけて、アイナさんが今渇望しているものを教えてください。

明確にあります! 私犬を飼ってるんですけど、犬の親友が欲しいんです。人間はSNSを通じて出会えたりするけど犬に友達を作るにはどうしたらいいんだろう? 公園に行くしかないのかな。

――確かに公園や道で出会い頭にじゃれ合ってる犬たちっていますよね。

そうなんですけど、そういう犬は大抵デカいんですよね。うちの葉蔵(ようぞう)は小さいので臆病でなかなかそういうわけにはいかなくて。友達のかてぃが飼ってるハヤンは葉蔵の友達なんですが、ハヤンは忙しいのであまり会ってくれなくて(笑)。犬が寂しくならないように友達が欲しくて、そのことばかりずっと考えちゃう日もありますね。何の話してるんだろう(笑)。

――今会いたくなってますか?(笑)。

ずっと会いたいです(笑)。犬の友達ができたら勝手に私の家に出入りして毎日葉蔵と遊んでほしいですね。

【アイナ・ジ・エンド
大阪府生まれ。’15年BiSHのメンバーとして始動し、翌年メジャーデビュー、’23年東京ドームで解散。ソロアーティストとしての音楽活動に加え、岩井俊二監督の映画『キリエのうた』の主演を飾るなど、多彩な活動を展開。アニメ映画『劇場版モノノ怪』第一章「唐傘」に続き担当した第二章「火鼠」の主題歌「花無双」と、エンディング曲「渇望」を収録したシングルが配信中

<撮影/鈴木ゴータ 取材・文/小松香里 ヘアメイク/KATO 中尾璃代 スタイリング/菅沼 愛>

(出典 news.nicovideo.jp)

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