【ドラマ】『あんぱん』 主人公が結婚することになったというのに、まるで祝福できないよ
【ドラマ】『あんぱん』 主人公が結婚することになったというのに、まるで祝福できないよ
『あんぱん』主人公が意味不明すぎる
NHK朝の連続テレビ小説『あんぱん』がここ何週かやってきたことというのは、のぶ(今田美桜)に教師になるという夢を抱かせて、師範学校に行かせて、愛国精神に目覚めさせて、豪ちゃんを*てその愛国に疑問を持たせるということだったわけですよね。その疑問を吐露した先が、昨日今日出てきた男だったことに興ざめしてしまうわけです。
のぶと嵩(北村匠海)がいつか結婚することはわかっていて、史実としてはのぶにとって嵩との結婚は再婚だから、その前に誰かと籍を入れておく必要がある。その「史実に合わせる」という作業のためだけに次郎という船乗りを登場させて、亡きパパ結太郎(加瀬亮)と同じセリフをあてがって、はい結婚することにしましたおめでとうよかったねって、誰が祝福できるのよ。なんで朝田の家のみんなはうれしそうなのよ。
のぶという人にちゃんと寄り添うなら、この人が「子どもらに愛国を説くのは本当はつらい」という思いに至ったことは大事件だと思うわけです。ここ数年の価値観がひっくり返ったわけだから、もう足元から人生が揺らぐような出来事ですよね。
そういう大事件に主人公が見舞われたとき、私たちが見たいのは「じゃあ、そののぶに対してあの人はどう思うんだろう」ということなわけです。
「子どもらに愛国を説くのは本当はつらい」
のぶがそう言ったとき、例えばヤム(阿部サダヲ)は何と言うだろう。
蘭子(河合優実)はどう思うだろう。
わりと先進的なママ(江口のりこ)は、豪ちゃんの墓石を彫れないほど落ち込んでいる釜じい(吉田鋼太郎)は、黒井先生は、うさ子は、そんなのぶに対してどんな言葉をかけるのだろう。
のぶの「愛国の鑑」がいつか折れるんだろうなとは思ってたけど、それが折れたことに対するリアクションが、よく知らない次郎という人にしかない。それをもって次郎という人を「のぶが唯一、本音を話せる人」と位置づけ、結婚させてしまう。
全員意味ねーじゃん、ってなっちゃうんだよな。朝田の家族も豪ちゃんも、駅で盛大にのぶを泣かせた寛先生(竹野内豊)も、その全員が「のぶが本音を話せない人」になってしまう。ここまで『あんぱん』が描いてきたあらゆる人間関係が水泡に帰してしまう。
のぶが次郎にだけ「本音を話せる」理由がないんです。ただただ、のぶを嵩以外の人間と結婚させるという展開のためだけにそうなっている。
もう本当につまらないと思う。史実と違うことをやろうとして始まったドラマが、中途半端に史実に忠実であろうとするためにクソつまんないことになってる。第40回、振り返りましょう。