【社会】「国民的RPG」も過去の話…? 『ファイナルファンタジー』最新作がシリーズ前作比“60%減”の衝撃的売上になってしまった“納得の理由”
【社会】「国民的RPG」も過去の話…? 『ファイナルファンタジー』最新作がシリーズ前作比“60%減”の衝撃的売上になってしまった“納得の理由”
2024年2月29日、PlayStation 5(以下PS5)で『ファイナルファンタジーVII リバース』(以下「リバース」)が発売された。本作は、PlayStationで1997年に発売された『ファイナルファンタジーVII』のリメイク作品となる。
このリメイクは3部作として制作されており、「リバース」はその2作目にあたる。原作は非常に人気の高い作品なので注目度は高かった。しかし……。
ファミ通の国内パッケージ版集計によると、シリーズ前作となる『ファイナルファンタジーVII リメイク』は初週で約70万本が売れているが、「リバース」は約26万本に留まっており、60%以上売上が減少しているのだ。
「リバース」は世界的に評価も高く、さまざまなレビューを集積するサイト「Metacritic」では93点のメタスコア(平均点/3月17日時点)を記録している。にもかかわらず売上は芳しくない。なぜなのだろうか?
最も大きい要因は「ハードの変化」だが……
理由としてまず考えられるのが、ゲームをプレイできるハードとして、PlayStation 4(以下PS4)を切り捨て、PS5のみの対応にしたことだろう。
『ファイナルファンタジーVII リメイク』がリリースされたとき、PS4はすでに世界販売台数1億台を越えていた。一方、PS5は2023年12月時点で約5000万台の売上となっている。当然ながら、日本でもPS5を持っている人よりPS4を持っている人が多いだろう。
ゲーム機を持っていない人が多いのであれば、ソフトを買う人が減るのは至極当然だ。
もちろん、DL版のみに対応しているデジタルエディションを購入し、集計に換算されない形でゲームを楽しんでいる人も少なくないと考えられる。
ただし、2023年に発売されたPS5専用ソフト『ファイナルファンタジーXVI』(以下「FF16」)はファミ通の集計によると国内パッケージ版だけで初週に約33万本売れている。
つまり、「リバース」は同じゲーム機で出たシリーズ作品よりも売上本数が低いのである。対応ハード以外にも要因が考えられるわけだ。
対応ハード以外の「大きな枷」
前述のように、『ファイナルファンタジーVII』のリメイク作品は3部作になっている。これらは完全に続き物のストーリーで構成されており、「リバース」も前作から話が続く形ではじまり、次作で結末を迎える作りになっている。
続き物は厄介である。もしリメイク版『ファイナルファンタジーVII』シリーズを遊ぶとしたら、もちろん最初からやったほうが楽しめるのだから(できればリメイク元の原作も遊んだほうがよい)。
かつて、『ファイナルファンタジー』シリーズの、ある開発者がメディア向けにこのようなことを語っていた。
「ナンバリング(通しで数字が入っている)シリーズですが、『ファイナルファンタジー』は毎回違うゲームなんだと読者にアピールしてほしい」
数字がついていると続編だと思い込まれかねないこと、そして、続きものだと遊びづらいと感じられる懸念があっての発言だといえる。
しかし、「リバース」は完全に続き物である。おまけに前作はクリアするのに30時間近くかかるし、その後、新作が出るまでに約4年かかっている。大作ゲームとしてはそこまで長くない期間だが、ユーザーとしては間が空いていると感じる程度の時間だろう。
そして、「リバース」は短く遊んでも35時間以上かかるし、要素を遊びつくそうとすると80時間以上かかるといわれている。続きものというだけで参入障壁が高くなるうえに、ボリュームも膨大。初プレイのユーザーにとってはハードルが高いのだ。
厳しくなるのは目に見えていたのに…
違った問題点として、開発の大規模化がある。仮にゲームの売上が落ちていたとしても開発費をペイできていればなんら問題ないのだが、「リバース」に関してはどうも逆方向のようなのだ。
「リバース」の公式サイトには開発スタッフのメッセージが掲載されており、そこには物量に対して苦労した話が掲載されている。なかには「(開発)後半の1年半はゲーム制作以外の記憶がない」と語る人もおり、楽な開発ではなかったことが窺える。ボイスアクターは海外版を含めると1000人以上もいるそうで、ただただ驚くばかりだ。
実際、本作を遊んだ私も非常にリッチなゲームだと感じた。広大なオープンワールドが複数用意されているうえ、ミニゲームも豊富で、仲間キャラクターごとに動きのみならず戦い方まで差別化されている。ムービーもいちいち豪華だし、ストーリーの進行具合に応じて仲間のセリフまで変わったりもする。確実に前作以上の出来だろう。それでも手が届いていない部分があるのだから、どれほど大規模なのか。
開発費の高騰にどう向き合うか
ビデオゲームが高解像度のゲーム機で開発されるようになったころから、開発費の高騰はしばしば問題視されていた。にもかかわらず、「リバース」はそれに真正面から挑んだのだ。
続きものであり逆風なのは目に見えていた。それでも、スクウェア・エニックスは、あえて労力(≒お金)をぶちこんで勝負したのだ。それだけに売上がシリーズ前作より60%以上落ちているというのは厳しい状況だろう。
もっとも、参照した販売本数はあくまで初週のものである。前作は世界累計700万本を達成しているし、長く売れるのであれば累計販売本数も伸びていくと思われる。
なお、ファミ通の国内パッケージ版集計によると、「リバース」の2週目販売本数は2万4482本(初週約26万本)。近年の『ファイナルファンタジー』シリーズは2週目で販売本数が大幅減する傾向があるとはいえ、右肩下がりを避けるためには、新たなユーザー層を開拓できるPC版の登場が期待される。
いずれにせよ、難しい環境に自ら突っ込んでいきながら、開発費を投じ、リッチに作り上げたという点で「リバース」は稀有なゲームである。はたしてその結果はどうなるのか、そして3作目の仕上がり、売上はどうなるのか。
『ファイナルファンタジー』が注目を集めるゲームであり続けることは間違いないだろう。
(渡邉 卓也)