【社会】「エシカル消費って何?」と中学生に聞かれたらどう答えるか…頭がいい人ほどシンプルに説明できる理由

【社会】「エシカル消費って何?」と中学生に聞かれたらどう答えるか…頭がいい人ほどシンプルに説明できる理由

中学生にも分かりやすく説明するならば、身近な例としては、リサイクル製品を購入することや、地元の農家の野菜を買うことなどがエシカル消費の一環と言えます。

物事をわかりやすく説明するにはどうすればいいか。研修講師の深谷百合子さんは「説明が上手な人は、たとえるのが得意だ。常に『これを何かにたとえるとしたら?』と意識していると、言葉を置き換える力が養われる」という――。

※本稿は、深谷百合子賢い人のとにかく伝わる説明100式』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■「エシカル消費に取り組む」をどう説明するか

「説明」は、自分の言いたいことを伝えるのではなく、相手の聞きたいことを伝えます。なぜなら「説明の目的」は、相手が内容を理解し、何らかの行動を起こしてくれることだからです。ですから、説明の内容を相手にきちんとわかってもらわなければなりません。

もしも、相手が子どもだったら、あなたは子どもにわかるように、難しい言葉を使わずに説明しようと意識するのではないでしょうか。大人に対して説明するときも、同じ意識をもって説明することが大切です。基本的には中学生にもわかる言葉を使って説明しましょう。

例えば、「エシカル消費に取り組みましょう」と言われても、言葉の意味がわからなければ行動を起こしてもらうことはできませんよね。

「人や社会、環境にやさしいモノやサービスを選びましょう」
「お金を使うときに『よいこと』も一緒に買いませんか」

このように、専門用語を使わずに説明すれば、わかりやすくなります。

■相手のレベルに合わせて言葉を使い分ける 

注意しなければならないのは、こうした専門用語だけではありません。

ある日、中国人と会議をしていたとき、日本人社員が「計画との間に齟齬をきたした」という報告をしました。しかし、中国人の通訳が「齟齬」の意味を理解できずに困っていたのです。「計画通りに進まなかった」のように表現すれば、誰にとってもわかりやすいですよね。

これから社会の多様化が進んでいきます。外国人と接する機会も増えてくるでしょう。誰にでもわかる「やさしい言葉」を使うように心がけたいものですね。

時折、「専門用語を使って説明しないと、プロにみられないのではないか」と誤解している方や、「こんなやさしい表現にしたら、相手に失礼なのではないか」と恐れている方がいらっしゃいます。でも、大事なのは、「相手のレベルに合わせて、相手が理解できるように言葉を使い分ける」ことです。専門用語を使わずに、誰にでもわかりやすい言葉で説明したほうが、相手からバカにされるどころか一目置かれるはずです。

■専門用語はみんなが知っているものに置き換える

どの仕事にも、その仕事特有の専門用語があります。あなたの仕事では、どんな専門用語が使われていますか。私は会社を辞めて独立し、個人事業主としてスタートした頃、それまでの会社員人生では見聞きしたことのない多くの言葉に出くわし、面食らいました。今ではその言葉を普通に使っているため、会社勤めの知人から「何それ?」と聞かれて、「しまった。これも専門用語だった」と気づくことがあります。

日常的に使っている言葉は、それが専門用語であることを忘れてしまいがちです。

もちろん相手が自分と同じ分野の仕事をしている人や、その道に詳しい人ならば、専門用語を使って説明するほうが伝わります。用語によっては、該当する日本語がなかったり、ニュアンスを正確に伝えられるような表現がなかったりする場合もあるので、専門用語のまま話したほうがわかりやすいのです。でも、相手が関係者でない場合は、専門用語を使わずに説明する必要があります。

例えば、私は会社員時代、工場の「動力部門」という部署で仕事をしていました。この「動力部門」とは、どんな部門なのかを説明してみましょう。

「『動力部門』というのは、工場の受変電設備や熱源設備を運転、管理する部門です」

同じ職種の方でしたら、この説明でもイメージできると思いますが、そうでない方には聞き慣れない言葉が並んでいてよく理解できません。さらに、「受変電設備とは、電力会社から高圧の電気を受け入れて、低圧に変圧する設備で……」とか、「熱源設備とは」などと説明し始めると、もう聞きたくなくなってしまうのではないでしょうか。そこで、こんな風に説明してみます。

「『動力部門』というのは、『工場の心臓部』のようなものです」

こうすることで、「止めてしまったら大変なことになる部門だ」というイメージは伝わるのではないでしょうか。そのうえで、「工場で使う電気を送ったり、冷房や暖房のための設備を運転、管理している」と伝えれば、どんな部門なのかを相手に理解してもらうことができます。

■「体の奥にネクタイをしているイメージをして」

私が「ヒップリフト」というトレーニングを教えてもらったときのことです。「ヒップリフト」とは仰向けに寝て両膝を立て、ゆっくりとお尻を持ち上げるトレーニングのことです。私がひょいっとお尻を上げると、トレーナーに注意されました。

ただお尻を上げてもだめ。ちゃんと胸骨が下がっていないと意味がないの」

そう言われて、私が「胸骨ってどの骨?」と思っていると、トレーナーはわかりやすいたとえを使って指示を出してくれたのです。

「体の奥にネクタイをしているイメージをしてください。息を吐きながらそのネクタイを持ってグーっと下に引っ張るイメージをしてみて」

言われた通りにイメージすると、勝手にお尻が浮き上がってきました。ただお尻を上げたときと比べて、筋肉への効き方がまるで違います。

「どうしてネクタイと思いついたのですか」とトレーナーに聞いてみると、「胸骨の形がネクタイに似ていると思ったから」と言って、骨格標本を見せてくれました。

■説明上手な人は常に「何かにたとえるとしたら?」を探している

私の中国語の発音矯正の先生も、いつもわかりやすいたとえを使って教えてくれます。私が中国語の「ウ」の発音に苦戦していると、先生は、「アツアツのたこ焼きを口に入れたとき、どんな風になる?」とヒントをくれました。アツアツのたこ焼きを口に入れたときをイメージすると、舌を思い切り下げて、口の中の空間が縦に大きくなりました。そのまま発音すると、正しい発音ができるようになったのです。

しかも、自分ができるようになっただけでなく、自分が教わった通りのことを他の人に伝えると、その人もできるようになりました。わかりやすいたとえは、「再現性」があるのです。

こうした教え方の上手な人たちに共通しているのは、「できている状態」をよく観察していることです。その状態とよく似た状態を探して、具体的で身近にあるものに置き換えているのです。「何かにたとえるとしたら?」と常に問いを持ち、身近なものを観察していくことで、「たとえる力」は養われていきます。

■小学生に「発電するときに熱が発生する」イメージを伝える

私たちは、身近にあるものや、普段から経験していることはイメージできます。しかし、どれほど言葉が簡単でも、体感したことがなければイメージできないことがあります。

私が勤めていた工場に、小学生が見学しに来たときのことです。工場にある「コージェネレーションシステム」をどう説明したらいいのか、悩みました。

「コージェネレーションシステム」とは、都市ガスなどの燃料を使って発電すると同時に、発電時に発生する熱も利用できる「一石二鳥」の設備です。

しかし、「発電するときに熱が出る」ということをイメージするのは、自分で発電するという体験が乏しい人にとって簡単なことではありません。

■体感を伴う経験がなければイメージの源は増えない

そこで、身近な例で「自分で発電する体験」を探してみました。例えば、自転車のライトを、ペダルをこいで点灯させるのも「発電」です。今の子どもたちなら、自転車よりも理科の授業で使われる手回し発電機のほうが、より身近に感じられるかもしれません。

いずれにしても、自分で電気を作るときは、体を動かすので暑くなります。

「皆さんは今、手や足を使って電気を作りましたが、発電所では天然ガスや石油などの燃料を使って電気を作っています。燃料を燃やすと熱が出ます。皆さんも今、体を動かしたから暑いでしょう? 皆さんの体の中で熱が作られたからです。冬の寒い日に自転車をこいだり、手回し発電をしてみたらどうでしょう? 体が温かくなって一石二鳥ですね」

そう話をしたあとで、コージェネレーションシステムも同様であることを伝えると、子どもたちは頷いてくれました。

自転車こぎや手回し発電のように、体感を伴う経験をすると、言葉のイメージがしやすくなります。そのためには、まず自分自身が体感していなければなりません。日頃から「これってどんな感じなのだろう?」と好奇心を持ち、とりあえずやってみて、「体で感じた経験値」を上げていくことが、説明上手への近道なのです。

■フィルムカメラを知らない世代に「現像」のたとえが通じない

ここまで、専門用語は身近にあるものにたとえるという話をしてきましたが、たとえも時代の変化に伴って、見直しをしていく必要があります。

私が液晶パネルを製造する工場に勤めていたときのことです。

生産部門で新入社員研修を実施していた方から、「今まで使っていたたとえが通じなくなって、困った」という話を聞きました。液晶パネルの製造工程の中には、「露光」「現像」という工程があるのですが、それまでは、「露光」「現像」を説明するのにフィルムカメラをたとえに使っていたのだそうです。ところが、フィルムカメラを知らない世代が増えてきて、そのたとえが通用しなくなってしまったそうです。

実は、先ほど述べた「発電すると熱が発生する」ということを、「ペダルをこいで、自転車のライトを点灯させる」という経験にたとえる話も通用しなくなる可能性があります。充電式、乾電池式、ソーラー式など、ペダルをこがなくてもライトが点灯する自転車に乗る人が増えてくると、「ペダルをこいで自転車のライトを点灯させる」という体験を持つ人が減り、話が通用しなくなってくるのです。

■時代とともにたとえを更新していく必要がある

いいたとえができると、「やった!」と嬉しくなります。しかし、残念ながら一度作って終わりではありません。時代が変化し、たとえに使っていた物や現象が、なくなってしまうこともあります。また、「ある年代以上の世代には通用するが、20代より下の世代には通用しない」ということもあります。相手がどの年代なのかによっても、使うたとえを変えていく必要があります。

さらには、日本人にしか通用しないたとえではなく、外国人にも通用するたとえが必要になることもあるでしょう。

たとえも、時代の変化や生活様式の変化などに合わせて、ゲーム感覚で楽しみながらバージョンアップさせていきましょう。

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深谷 百合子(ふかや・ゆりこ
合同会社グーウェン代表
大阪大学卒業後、ソニーグループ、シャープ技術者・管理職として工場の環境保全業務を行う。専門用語を噛み砕いて説明できることが評価され、工場の見学者に環境対策の説明や、テレビや新聞からの取材に対応する業務を任されるようになる。その後、中国国有企業に転職。100名を超える中国人部下の育成を任される。2020年独立。コミュニケーションをテーマに、各種メディアで活動中。

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※写真はイメージです – 写真=iStock.com/lielos

(出典 news.nicovideo.jp)

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