【芸能】松重豊、遠藤憲一が演じた“孤高のグルメ”善福寺六郎は「遠藤さんに断られたらやらないつもりだったんです」
【芸能】松重豊、遠藤憲一が演じた“孤高のグルメ”善福寺六郎は「遠藤さんに断られたらやらないつもりだったんです」
俳優の松重豊と遠藤憲一が、1月19日に都内で開催された「劇映画 孤独のグルメ」公開後舞台あいさつに登場。若かりし頃から俳優仲間として苦楽を共にしてきた“盟友”ならではの空気感で、息の合ったトークを展開した。
【写真】松重豊“井之頭五郎”&遠藤憲一“善福寺六郎”、「劇映画 孤独のグルメ」での共演シーンツーショット
■主人公・井之頭五郎がパリで奮闘
「劇映画 孤独のグルメ」は、原作・久住昌之氏、作画・谷口ジロー氏によるハードボイルド・グルメ漫画「孤独のグルメ」を映像化した“グルメドキュメンタリードラマの金字塔”の劇場版。シーズン10まで続くテレビシリーズで主演を務める松重が、今回は監督・脚本・主演を務め、主人公・井之頭五郎のパリでの奮闘ぶりをパリのグルメと共に描くサバイバルロードムービーだ。
松重は井之頭五郎、遠藤はもともと松重がドラマシリーズで着ていたもので、劇中ドラマ「孤高のグルメ」の善福寺六郎の役衣装に身を包み、大歓声に迎えられて登場した。
これまでのPRイベントでは白髪のままで登壇していたが、今回は黒髪に役衣装の“井之頭五郎モード”で登壇した松重は「今日はライバルがいますので…。善福寺六郎の人気に押されていますので、今日は井之頭五郎としてやってまいりました」とライバル心をむき出しにして、会場を沸かせる。
一方、遠藤は「何かすいませんね、後半ポロポロッと出てきて。一生懸命監督の言う通りにやっただけですから!でも、何か(映画の)邪魔しているんじゃないかなって、それだけが心配なんだよね」と自身の演技を振り返って恐縮すると、松重は「してないよ!」とすぐさま否定し、観客からも大きな拍手が送られた。
■興収10億狙える大ヒット「これからも口コミで広げていただきたいです」
公開から1週間以上経過し、興行収入は10億円も狙える勢いだが、松重は「いろんなお客さんに励ましの言葉を頂き、劇場で楽しんでいただけていることが、僕らの至上の喜びなので」とした上で、「他の映画に比べたら小規模で、目標数字もそんなに大きくはないんですけど、見ていただいたお客さんの『腹が減ったよ』『面白かった』『心が温まったよ』という言葉が僕らにとって最大の慰みになりますので、これからも口コミで広げていただきたいです」とうれしそうに語り、さらなる“口コミ”を呼び掛けた。
遠藤の出演情報は、劇場公開初日に初解禁となったが、そのことに触れられた遠藤は「そんなにもったいつけるもんじゃないかなと思っていたんですけど」と照れ笑いしつつ、完成した作品を見て「普通映画ってどこか飽きのくる部分があると思うんだけど、本当にこれお世辞抜きで、全く飽きずに『ここまで面白いものを作ったのか』と、すぐLINEして『大傑作です』って」と率直な言葉で松重に感想を送ったことを明かす。
さらに遠藤は「俳優としては初めの頃、緻密な人なので『面倒くせえ人だな』と思っていたんですけど、そういう緻密さが監督業、脚本業に生かされていて、本当に素晴らしい作品を作ったなと。感動しました。おめでとうございます」と盟友ならではの言葉で称賛、祝福した。
■松重「遠藤さんしか浮かばないんですよ」
そんな遠藤が務めた劇中ドラマ「孤高のグルメ」善福寺六郎という役について、松重は「『孤高のグルメ』での井之頭五郎(にあたる役)は誰がやる?ってなったときに、遠藤さんしか浮かばないんですよ。名前は井の頭公園のちょっと上の善福寺公園から取りまして善福寺六郎として。遠藤さんに断られたらこの企画はなくなると。あそこのシーンはやらないつもりだったんです」と、遠藤なしでは成立しなかったことを告白。
続けて松重は「若い頃から血みどろのVシネマとかで2人とも殺し合いとかばっかりやってきて。今はちまたで『かわいい』って言われてますからね。世界を恐怖の底に突き落とすような2人だったんですけど、最近どうもフェーズが変わってきたみたいで。今回遠藤さんに善福寺六郎をやっていただいて、もう思うつぼというか、お客さんにあそこまで笑っていただけるとは思っていませんでしたし、遠藤さんに出ていただけたおかげでございます」と、快く引き受けてくれた遠藤に感謝を伝えた。
それを受けて、遠藤は「どの役でももちろんお受けしようと思っていたんですけど、まさかまっちゃん(松重)の化身みたいな役とは思いもしなかった。ただでさえ(松重は)食べることの天才で、おいしそうに食べるんで」と意外な配役に驚いたそうで、「俺あんまり食べ方上手じゃないんですよ。だからうそだろうと思って、すごいプレッシャーになっちゃって。まっちゃんに『(孤独のグルメで)ラーメンを食べている場面のあるDVDを何枚かくれないかな』って言って。それを何度も見てプレッシャーを受けながら現場に行きました」と振り返った。
また、遠藤は現場での松重について「横でむしゃむしゃ普通にチャーハンを食っている姿がうまそうでね。終わったらまた監督業に戻って。監督、俳優…いろんなものをやっている姿が素晴らしいなと思いました。アングルが気に入らないときは、カメラマンを呼んで懇々と指導して。ある種、先生みたいなこともやっているし、すごいなあ一人で何役も、と思って感心しました」と、俳優・監督として躍動する“盟友”に敬意を表した。
■遠藤「とにかく迷惑をかけないことが第一」
反対に、松重は食べるシーンに自信なさげな遠藤に「食べる姿は『バイプレーヤーズ―』で合宿生活をしていてずっと見ているから、それで問題ないんですけど。始まるときからうるさいんですよ!」と苦笑い。
「『おいしそうに食べられているかな?』『箸の持ち方自信ない』『ラーメンどうすすってる?』『まっちゃん!まっちゃん!』ってずっと聞いてくるんで(笑)。『自由に食べてくださいよ!』って」と心配性な遠藤の様子を明かすと、遠藤は「とにかく迷惑をかけないことが第一だったので…」と述懐。
そして松重は「あれ(遠藤=六郎の登場シーン)が一番おかしいところなので。そこで観客をけむに巻くというか。『今まで見てたのは何だったんだろう?』って。『孤高のグルメ!?』『遠藤さん?』と。そこがやっぱり仕掛けとして面白いところなので、遠藤さんのおかげでフェーズが変わる瞬間ができました」と、あらためて大事なシーンに出演してくれた遠藤に感謝を込めた。
「劇映画 孤独のグルメ」は、大ヒット上映中。
◆取材・文・撮影=月島勝利(STABLENT)