【芸能】日本人は「不安になりやすい遺伝子」を持つ割合が多い? 中野信子さんと脳科学で考える「そもそも人はなぜ悩むのか」
【芸能】日本人は「不安になりやすい遺伝子」を持つ割合が多い? 中野信子さんと脳科学で考える「そもそも人はなぜ悩むのか」
日本人は「不安になりやすい遺伝子」を持つ割合が多い? 中野信子さんと脳科学で考える「そもそも人はなぜ悩むのか」 今回の回答者は脳科学者の中野信子さんです。 もっぱら回答者の人生経験に基づいてアドバイスするのが人生相談。しかし中野信子さんは『週刊文春WOMAN』… (出典:) |
6/9(月) 11:11 CREA WEB (※抜粋)
https://news.yahoo.co.jp/articles/4900618848b8cd02c5175c2a2b6e9e10b087a9fd?page=2
■人間は不安や苦しみや葛藤があるから生き延びられた
では科学的見地からみると、私たちはなぜ悩むのか、なぜ不安や苦しみや葛藤を泣きながら抱えて生きるのか、考えてみましょう。
まず、あなたや私が生きているという事実があります。 私たちは40億年前に地球上に誕生し、途切れることなく続いてきた生物の系譜の中にいる。私たちが存在しているのは、さまざまな実験の末に生き延びた結果なのです。
特に日本人は、不安になりやすい遺伝子を持つ人の割合が非常に高いのですが、そうなったのもさまざまな実験の結果なのです。日本は地震や台風などの災害が多いことが世界の統計からも明らかであり、このような厳しい自然環境下では、不安な人は災害に備えたでしょう。
一方、楽観的過ぎる人は災害に備えなかったのではないでしょうか。当然、災害に備えていた人のほうが生き延びる確率は高いですから、長い年月を経て、不安になりやすい人の遺伝子が濃縮されて、日本人は不安が高い集団になっていったと考えられます。今も地震や異常気象やコロナなど、不安を感じている人が少なくないと思いますが、それは極めて正しい反応であり、不安で悩むということは、生き延びるために必要なことです。
危険なもの、有害なものから自分を遠ざけるために、「悩む」という仕組みが私たちには備わっている。つまり悩むことは、生存の妨げになるものを避けるためのアラート機能のひとつなのです。
ただ、不安で悩むということは脳にとっては不快でしかなく、辛いし、怖い。認知的にこれを解放する必要があるわけですが、かつてその役目を懸命に担ったのが「宗教」でした。その「来世で救われる」「善行で徳を積む」といった概念は、人々を長期的に有利な生存戦略へと誘導して安心させようとしたのだと思います。でも現代は宗教的権威の機能が変化しているので、悩んで辛い時に「科学」が役に立てばいいと思っています。
自分の生存を脅*ことではないにせよ、例えば、試験には合格したいけれど、必死に勉強をするなんてことはしたくない。あるいは、家庭は壊したくないけれど、不倫の恋は続けたい……。どれも虫のいい悩みではありますが、人はこのような矛盾する欲求で葛藤した時、合理的な選択をするのではなく、目先の欲求に従ってしまいがちです。
「痩せたいのに痩せられない」という悩みもよく聞きます。たとえダイエットに成功したとしても7?8割はリバウンドしてしまうそうです。それは、ほとんどの人が「食べたいものを食べる」という目先の欲を脳に優先させられてしまうからです。
それでまたさらに「自分はダメな人間だ」と悩んだり苦しんだりするわけですが、それは人が「自分は知的で、過ちを犯さず、フェアな判断をする脳を持っている」と思い込んでいるからなんですね。そんな脳が正しく機能しないのは、自分に、あるいは家族や環境に問題があるからだと思ってしまう……。
いえいえ、私たちの脳はそんな完璧に合理的でもフェアでもありません。例えば、脳にはDLPFC(背外側前頭前野)という損得の計算を担当する領域があり、ここは「正しい、正しくない」を判断する領域を凌駕するほど大きいのです。だから私たちは、「正しい」よりも「自分が得をする」ほうを優先させてしまいがちです。昨今の国際情勢を見ても、「正しい」よりも「自分(自国)の利益」を優先させる様子が実に分かりやすく見て取れますね。
ただし、損得勘定だけでは人間関係がうまくいかなくなったり、資源を奪い合って戦争になったり、その資源が枯渇してしまったりする恐れがあります。そのため、DLPFCを暴走させないブレーキ役として、脳には「善」や「美」を判断する機能も淘汰されずに備わっているのだと私は考えています。