【芸能】「戦友の無念が描かせる」水木しげるさん長女 父の戦争漫画に見た戦場のリアル
【芸能】「戦友の無念が描かせる」水木しげるさん長女 父の戦争漫画に見た戦場のリアル
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「戦友の無念が描かせる」水木しげるさん長女 父の戦争漫画に見た戦場のリアル 【戦後80年 あしたのために】8月15日、第2次世界大戦の終結から80年を迎えた。戦地から生きて帰った人も多くがこの世を去った。「ゲゲゲの鬼太郎」… (出典:スポニチアネックス) |
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2010年12月、スポニチ本紙のインタビューを受ける水木しげるさん Photo By スポニチ
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原口尚子さん(撮影・松永 柊斗) Photo by スポニチ
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「総員玉砕せよ!」の1ページ。
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【戦後80年 あしたのために】8月15日、第2次世界大戦の終結から80年を迎えた。戦地から生きて帰った人も多くがこの世を去った。「ゲゲゲの鬼太郎」の漫画家で南方戦線で戦った水木しげるさんも、その一人。戦争漫画を描き続けた父の思いを、長女で水木プロダクションの原口尚子さんが語った。
物心ついた頃には、左腕のない父が当たり前だった。
「爪切り以外は右腕だけで何でもやって、不便に見えなかった。母から戦争でなくしたと聞き、戦争は大変なんだなと思いましたが、戦争が分からなかった。父から聞くのは原住民と仲良くなったとか、バナナやパパイアがおいしいなど楽しい話ばかりでした」
21歳だった1943年、パプアニューギニア・ニューブリテン島の激戦地ラバウルに出征した水木さん。左腕を爆撃で失い、所属の分遣隊が全滅して1人生き残ったにもかかわらず死を命じられる理不尽も経験している。だが、娘に話さなかった。
「中学生の頃、父が書いた『娘に語るお父さんの戦記』という本で初めてどんな思いをしてきたか知りました。でもあらためて深くは聞けなかった。私は怖い話が苦手。引きずるたちなのもあって。妹も聞いてないようです」
家族の前では楽しい父親だった水木さん。だが「亡くなる10年ほど前」に突然戦争について話すようになったと原口さんは言う。
「“戦友たちに後ろから声を掛けたけど、誰も振り向かなかった夢を見た”とか。それまで思い出したくない、思い出してもしようがないという思いもあったんでしょうね。押し込めていた思いがあふれたようでした」
妖怪漫画「ゲゲゲの鬼太郎」で有名だが、戦争は貸本漫画家時代から描いてきたテーマだ。兵士の手足が吹き飛び、眼球が飛び出るさまも淡々と描く作風。過度に演出的な描写はない。ユーモアのにじむ日常も描かれる。だがそれが怖い。
「静かに怖いんです。普通の人が簡単に*でいく戦場の怖さが浮かび上がる。『総員玉砕せよ!』は子供の頃に読んでトラウマになりました」
73年「総員玉砕せよ!」は水木さんが自身を投影した丸山二等兵の目線でニューブリテン島の戦いを描く。水木さんが「90%真実」と語った入魂作だ。中でも原口さんが印象深いというのが「小指の話」。戦闘中、撃たれた兵士が生きているにもかかわらず仲間たちは遺族に渡す「遺骨」を作ろうと小指をスコップで切る。
「今の常識じゃ考えられない異常な状況です。まだ助かるかもしれないのに、遺骨作りを優先してしまう」
丸山の戦友も上官も次々*。無駄死にと思える死もある。そして最後に丸山も…。そこに鬼太郎のようなヒーローはいない。
「全てを覆して救ってくれるヒーローは戦場にいないと感じたからだと思います。戦友たちが次々に*でいきます。丸山が“誰にみられることもなく、誰に語ることもできず…ただわすれ去られるだけ”と力尽きる場面は胸に迫ります。他の作品も含め、戦友の無念が私に戦争を描かせている…と母には語っていたようです」
原口さんは今、水木プロの一員として膨大な作品を読み、作品に込められた思いを改めて感じている。
「水木が漫画で戦争反対と訴えることはないです。でも戦争の残酷さや理不尽が肌感覚で伝わります。兵士が仲間の遺体の腐臭に“くせぇ〜”なんて言ってしまう場面もあります。それが戦場の現実なんですね」
父が語れず、娘が聞けなかった地獄。右腕一本で描き続けた父への思いも交錯する。
「きっといつも戦友を思い出してたんでしょうね。へらへらして、ベタベタしてない“昭和の父”でしたが、家族を守る強い意志や愛情は感じました。戦場を一兵卒として経験した人が戦場を描く漫画は、他にないと思います。水木の戦争漫画をぜひ若い人にも読み、理解するのでなく感じてほしいですね」
(※以下略、全文は引用元サイトをご覧ください。)