【社会】外国人ジャーナリストが考える松本人志問題「ニッポンの芸能界は女性蔑視の傾向が凝縮されている」

【社会】外国人ジャーナリストが考える松本人志問題「ニッポンの芸能界は女性蔑視の傾向が凝縮されている」

日本の芸能界が女性蔑視の傾向を持つ部分もあるとしても、それを改善するためにはどんな取り組みが必要なのか、考える必要がありますね。

なぜ「傷つけていたならゴメン」と言えなかったのか…それでも鈴木涼美氏が「松本人志さん追放には賛成できない」理由とは〉から続く

週刊文春1月4日・11日号」に第一報「《呼び出された複数の女性が告発》ダウンタウン・松本人志(60)と恐怖の一夜「俺の子ども産めや!」が掲載されてから、大きな反響と議論を呼んでいるダウンタウン・松本人志(60)をめぐる問題。

 一連の報道、松本本人の言動、メディアや世間の反応について、各界の識者たちはどうみていたのか――。「週刊文春」で2週にわたって掲載された特集「松本問題『私はこう考える』」を公開する。

 メディアが大騒ぎする松本の問題は、外国人ジャーナリストの目にはどう映ったのか。英エコノミスト誌元特派員で、聖心女子大学で教鞭をとるデイビッド・マクニール氏(58)は、ニッポン特有の芸能界とマスコミの歪な関係を指摘する。

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芸能界とメディアの依存関係

 松本氏の事件が報道され、すぐに想起したのはジャニー喜多川氏のスキャンダルです。この2つには、芸能界とマスコミの依存関係の影響が大きいという共通点があります。

 日本の芸能界とメディアの関係を海外で説明する際、私はかつてのハリウッドのスターとマスコミの間にあった相互的な依存関係を引き合いに出します。

 ハリウッドには、2010年頃まで、スターとマスコミが「グル」になって、スキャンダルを積極的に隠蔽してきた過去がある。それと同様のことが、日本でも行われています。昨年、英BBCが報じ、カウアン・オカモトさんが実名告発するまで、ジャニーズのスキャンダルが封じ込められてきたのは、芸能界とメディアの依存関係が依然として存在していたからです。

メディアが疑惑の追及に及び腰になる理由

 松本氏とジャニー氏の問題におけるもう一つの共通点として、巨大な芸能事務所の存在も挙げられます。

 松本氏が所属する吉本興業は、お笑い芸人だけでなく、アスリート、俳優など6000人のタレントを抱え、あらゆるテレビ番組に人材を提供する巨大タレント事務所です。

 ジャニーズや吉本のように、圧倒的な存在感を誇る芸能事務所は、私の知る限り、海外では存在しない。メディアが疑惑の追及に及び腰になる理由はここにあると思います。

 来日して間もない2005年に、私は、ジャニー喜多川氏のスキャンダルを「ニューズウィーク日本版」に執筆したことがあります。しかし、他のメディアやテレビ局の反応は極めて薄く、「関心がありません」といった態度で驚愕しました。

​日本の芸能界は女性蔑視の傾向が凝縮されている

 今回松本氏の報道を受けて、2011年に引退した島田紳助氏の存在を思い出しました。彼は反社会的勢力との交際を理由に引退した。一方、彼は過去に女性マネージャーへの暴力事件を起こしましたが、わずか2カ月間謹慎するだけで、彼のキャリアに大きな影響を及ぼさなかった。女性への暴力は重大な過失ではないと誤ったメッセージを社会に伝えてしまいました。

 このように日本の芸能界は、男性中心の価値観や女性蔑視の傾向が凝縮されていると言えます。

 国会議員に占める女性比率が20%にも満たないとよく指摘されますが、日本のテレビ業界も番組制作のトップから出演する芸人に至るまで、その大多数が男性で占められており、男性中心社会に他なりません。

ジェンダー平等に向けてメディアの意識改革を

 外国人である私が、日本のテレビを見ていて不快感を覚えるのは、男性芸人が女性タレントを「お前」と上から目線で呼んだり、女性の頭を殴ったりして笑いをとることです。もちろんジョークだと理解していますが、笑いのためなら女性を無下に扱っていいと伝えているも同然です。またダウンタウンの笑いもこうした「男子校のノリ」で、女性の扱いがひどいと感じることは少なくありません。

 今回、松本氏を告発した女性がいるように、少しずつですが、日本の社会でも女性が声を上げやすい環境が整ってきています。私は女子大の教壇に立っていますが、男性のセクハラ的な言動を許容せず、毅然と指摘する女子学生が増えていることも実感します。

 ただ残念なのがメディアの状況です。大手紙やNHKはこうした性加害の調査報道に手をつけない。大人数のスタッフを抱えており、専属の調査チームを立ち上げる余裕があるにもかかわらずです。ジェンダー平等に向け、何より日本のメディアの意識改革が急務だと、痛感しています。

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 2月21日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および22日(木)発売の「週刊文春」では、「松本人志5.5億円訴訟」について特集する。

 A4用紙13枚におよぶ訴状の内容を詳しく紹介し、「週刊文春」を訴えた経験もある弘中惇一郎弁護士や、伊藤詩織さんの代理人・佃克彦弁護士が訴状のポイントを解説する。またA子さん、B子さんが訴状を読んだ感想、3年半前からスタートした「週刊文春」の取材経緯、編集部の主張も掲載している。

 さらに、「週刊文春 電子版」では橋下徹氏、箕輪厚介氏、江川紹子氏ら計8人の論者による「松本問題『私はこう考える』」を配信している。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年2月15日号)

デイビッド・マクニール氏

(出典 news.nicovideo.jp)

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